障害者グループホーム事業への取り組みと発展

障害者自立支援法の施行

我が国には、身体障害者が436万人、知的障害者が109万人、精神障害者が419万人、合わせて964万人の障害者の方がいると言われています。全人口の7.7%を占め、13人にひとりが障害者であるにも拘わらず、障害者を支える法制度の整備は遅れ、それぞれの障害別にバラバラの対策が取られ、自治体ごとのサービス提供にも格差が見られました。これらの問題を解決するために、2006(平成18)年に「障害者自立支援法」が施行されました。

この法律では、障害者が施設に入所するだけでなく健常者と尊重し合いながら地域で共生し社会福祉環境の整備や実現を目指すという「ノーマライゼーション」の考え方が、初めて盛り込まれました。そのひとつの形が、「障害者グループホーム」です。地域の中で家庭的な雰囲気の下、世話人の援助を受けながら数名の障害者が互いに支え合って暮らす共同生活の場です。

アパートオーナーからのご相談

ちょうどその頃、あるアパートオーナーから、次のようなご相談をいただきました。「私の息子が障害を抱えており、自分自身も年老いた状況でこの先どのように暮らしていくことができるのか不安です。この子や障害を持った子のために、私の不動産を障害者グループホームとして利用することはできないでしょうか?」

そこで当協会の相談員が、行政や運営事業者などにご協力をいただき、グループホーム建設に向けての調査や計画を行いましたが、多岐にわたる情報を集め調整していくことは容易ではありませんでした。グループホームの制度や現場のこと、事業収支や賃料設定等も含めた建築・不動産に関係すること、それから行政との協議など、グループホームをつくるには大変多くの事柄を同時に進めなければなりませんでした。とても大変な課題で、残念ながらそのオーナー様のご期待に添えることはできませんでした。

福祉住宅研究会のスタート

その経験から、障害福祉の専門家ではありませんが、土地・建物に関する知識および経験が豊富である当協会の立場から、障害者グループホーム開設のお手伝いができるのではないかとの思いが募りました。障害者グループホームに関する知識を整理し、円滑な普及に向けての情報を収集しようとの趣旨で、2008(平成20)年から「福祉住宅等の安定供給に関する実務研究会(略称:福祉住宅研究会)」をスタートさせることになりました。厚生労働省、東京都福祉保健局、障害者および親の会、障害福祉事業者の皆様にご協力いただき、3年半にわたり研究会を開催しました。

研究会の主なご参加メンバー 】

  • 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課 地域移行・障害児支援室 地域移行支援係
  • 東京都 福祉保健局 障害者施策推進部 居住支援課 居住支援係
  • (社福)全日本手をつなぐ育成会
  • (社福)東京ムツミ会
  • (一社)全国肢体不自由児・者父母の会連合会
  • (社福)日本身体障害者団体連合会
  • (一社)ゼンコロ
  • (社福)東京コロニー
  • (社福)あかつきコロニー
  • (社福)むそう
  • NPO全国精神障害者地域生活支援協議会
  • (社福)全国社会福祉協議会 全国社会就労センター協議会
  • (社福)東京都知的障害者育成会
  • 日本グループホーム学会
  • 東京都精神障害者共同ホーム連絡会   ※研究会ご参加時点の呼称です。

知識・経験の乏しい私達が偶然に取り組んだ障害者グループホーム開設へのご相談でしたが、「福祉住宅研究会」メンバーという専門家の皆様の力強いご協力をいただけることになりました。15回にわたる研究会を通じ、民間賃貸住宅経営者を支援している私達の立場から多くの協力が可能であることが分かってきました。

この研究会の成果を元に、地主さん・家主さんに協力を呼びかける「福祉住宅セミナー」を継続的に開催し、地主さん・家主さんが日常的に手にしていただけるような小冊子「障害者グループホーム普及に向けてのガイドブック」を作成・発行することができるようになりました。その成果が実り、都内のあちらこちらで障害者グループホームが開設できるようになりました。

また、私達が予想していなかった成果も得られるようになりました。活動当初は「社会福祉への協力」という意識が強かったのですが、リーマンショック、相続税課税強化、賃貸住宅の供給過剰という時代を迎え、障害者グループホームは「新しい時代の賃貸経営である」という確信に行き着いたのです。社会に役立つとともに、地主さん・家主さんは福祉系建物での土地活用ができるというものです。それに伴い、障害者グループホームから障害福祉全般へ、さらに高齢者福祉・児童福祉も含めた、福祉系全般での土地活用策という考え方に到達しました。この10数年間で獲得できた、大きな飛躍でした。