福祉系建物建設に必要な条件

相続税対策として賃貸建物を建設することは大きなメリットがあること、その反面、相続税対策として一般賃貸住宅だけに絞って検討すると空室リスクが発生する可能性があること、代わるべき対策案として福祉系など他の賃貸住宅用途を検討する必要性を説明しました。しかし、皆様の所有地の実状を把握して、どのような福祉系賃貸住宅を考えれば良いのか、なかなか整理することは難しいと思います。

東京都A市にお住まいの方から、「駅から少し遠い場所に土地を所有しています。周りの賃貸物件には空室が目立つので、福祉系で土地活用をしたいのですが?」というご相談をいただきました。次のような土地でした。

  • 東京都A市B町***番地 (JR中央線C駅 徒歩18分、Dバス停から徒歩1分) 
  • 面積 400㎡(121坪)
  • 南側 公道16m
  • 第一種中高層住居専用地域、建蔽率60%/容積率200%
  • 準防火地域、第2種高度地区、日影規制:3H-2H/4.0M

対象地の周辺状況把握

周辺はどのような状況になっているのか、本当に一般向けの賃貸需要がないのか、周辺状況を把握する必要があります。区市町村のホームページを見ると人口の推移、年齢別人口、世帯数などが簡単に調査できますので、まず調査してみましょう。もう一歩進めて、「政府統計の総合窓口(https://www.e-stat.go.jp/)」にある、「地図で見る統計(jSTAT MAP)」を利用して、対象地の半径2㎞を対象にして年齢別人口、世帯数、経済センサス表などを調査することが可能です。次の表は、「基本分析シート」です。

人口総数、男女別人口、5歳毎の階級別人口、年少・生産年齢・老年別人口について、また世帯構成、家族構成、持ち家数等についても正確に把握することができます。この調査は、東京都全体、A市全域および周辺2㎞の3地域をグラフで比較してくれていますので、現状だけでなく、将来見通しも把握できます。
この調査結果によれば、A市には大学が多いため、15~24歳人口が東京都平均より多いこと、ところが卒業とともに転出するので、25~44歳人口は東京都平均より少ないこと、65歳以上の高齢化率が高いこと、1人世帯の比率が東京都平均より10%も低いこと等が読み取れます。
対象地のご所有者は賃貸経営者の方ですが、この土地に一般賃貸住宅を建設することに不安を感じられて、ご相談になりました。調査してみると、ご不安の通りこの対象地に一般賃貸住宅を建設することはニーズに叶わないことがよく分かります。