福祉系建物 利回りとメリット

地主さん・家主さんに障害者グループホームなどの福祉系建物での不動産活用をお勧めすると、必ずと言っていいほど、「福祉系建物は利回りが良くないので……」と躊躇される方が大勢いらっしゃいます。果たして、そのご意見の通りなのでしょうか。福祉系建物について、本当に利回りが低いのか、どういう点が有利なのか、一般賃貸建物と比較してみましょう。

Ⅰ.福祉系建物の実質利回り

一般賃貸建物に比較すると、福祉系賃貸建物はやや賃料が低い傾向にあることは確かです。その一方、福祉系賃貸建物は、地主さんから福祉サービス事業者への一括賃貸借契約なので、個別の入居者・利用者と契約を結ぶ必要がなく、途中の空室リスクを考える必要はありません。一般賃貸では必要な、入退去の際の立ち会い、原状回復工事、新規入居者募集、募集期間中の賃料ロス等は一切発生しない有利さが、事業収支計画に表れてきます。1室10万円の賃料で一般賃貸にした場合と、1割安い1室9万円で福祉系賃貸にした場合の12年間の事業収支を比較してみました。

※当会作成

12年間で比較すると、賃料で10%低いはずの福祉系建物の方が一般賃貸建物より6.5%も手取り収入が多くなっています。次に記載するメリットと併せて考えると、福祉系賃貸が有利であることがご理解いただけると思います。

Ⅱ.福祉系賃貸経営のメリット

一般賃貸住宅では部屋毎に家主さんと入居者との間で個別に賃貸借契約を締結しますが、福祉系賃貸住宅では建物1棟として運営事業者と契約を交わしますので、様々なメリットが発生してきます。

①空室の心配がない
福祉系賃貸住宅では、賃貸借契約を締結する相手先は入居者・利用者などの個人ではなく、福祉事業を運営する法人事業者となります。法人事業者との一括契約になりますので、仮に一部の部屋に空室が出たとしても、支払っていただく賃料には変更がありませんので、空室の心配がありません。
②長期安定収入が見込める
一般賃貸住宅では契約期間2年というのが標準ですが、福祉系賃貸住宅では10年・20年という長期契約が普通なので、短期間で入替えの心配をする必要がありません。長期間にわたって、安定収入が見込めます。
③入退去の手間及び費用の心配がない
福祉系賃貸住宅では運営事業者に対する法人一括契約なので、各部屋の入替えも事業者の責任範囲で行われ、家主さんの負担はありません。一般賃貸住宅では、平均4年間の入居期間と言われますが、退去にあたり原状回復工事費用、募集に関する諸費用、その間の入金ロスが必ず発生します
④管理が不要
一般賃貸住宅では、入居者管理を賃貸管理業者に委託することが多く、数パーセントの管理業務手数料を支払っています。福祉系賃貸住宅では、運営事業者への一括契約なので管理手数料は必要ありません。
⑤建物維持管理費用が少な目
一般賃貸住宅では、建物修繕のほか、設備に関する修理費用・交換費用負担がかなり重くなっています。すべてではありませんが、福祉系賃貸住宅の場合、小修繕などは運営事業者が負担することが多いので、家主さんの費用負担が少な目になることがあります。

以上のような理由から、実質の手取り収入が上回るだけでなく、福祉系賃貸住宅の方が一般賃貸住宅より様々なメリットがあるという結果になります。