「ペットを守る信託契約」
2019(令和元)年10月31日(水)に行われた賛助会員様向け「相続問題・老後対策を考える」勉強会では、佐藤新総合法律事務所・池本優子弁護士から、ペットを守る信託契約というユニークなテーマでお話しいただきました。ペットを題材にしていながら、家族信託契約は私達の生活にとても役立つものだという分かりやすいご講演でした。
1.飼主さんとペットの状況
- 70歳女性、一人暮らし
- 愛犬(3歳)名前はペロリ
- 離れて暮らす長女(35歳)犬アレルギー
次女(30歳)ペット禁止の賃貸マンション住まい - 資産 自宅土地建物(時価額3000万円)、預金3000万円
2.遺言を残して、75歳で飼主さんが死亡
- 遺言の内容:
私亡き後、愛犬ペロリは次女に引き取って貰いたい。
そのため、自宅土地建物は次女に相続させ、預金のうち1000万円は愛犬の飼育費用、残りは長女・次女で折半してください。 - ところが、遺言書があったにも拘わらず、長女と次女が話し合い、自宅も預金も仲良く1/2ずつ均等に分けるよう遺産分割しました。
- せっかく、遺言を書いたのに愛犬が守られないことに!
1) 遺言で遺産の分け方を決めても、相続人がこれと異なる遺産分割協議をすることが可能。
2) 愛犬を次女に託すと、愛犬は「次女の所有物」。飼えなくなった時には、自由に手放してしまえる。
3) 誰かが遺言に違反しても、それを守らせる仕組みがない。
4) 不測の事態(事情の変更)に対応できない。 - 愛犬ペロリは飼う場所もなく、引き取り手もいないということになりかねません。さて、どうなるのでしょうか?
3.「ペット安心信託」を使うと、どうなるのでしょうか?
(1)信託とは、「信じて託す」契約
外国人を拒否するだけでは賃貸経営が厳しくなり、入居率低下につながります。まずは、外国人を受け入れるための発想の転換が必要です。
日本に来て何年経つか、日常会話はできるか、保証会社との契約、職業の確認など、入居申込みを受けた際の審査の段階で気を配ることが重要です。契約に際しても「入居チェック」は重要です。設備の正しい取り扱い、ごみの取り扱い、緊急時対応、日常生活のマナーと、やってはいけないことの説明をして、Q&Aで本当に理解したかどうか確認することで入居者の把握ができます。
・飼主さんと次女との間で、この財産の管理をお願いしますという信託契約を結びます。
・次女は、ペット禁止の賃貸マンションで飼えませんので、愛犬の暮らしをコーディネートしてくれるA社に委託します。
・飼主は、愛犬の行き先について委託者に、自分の意思で細かく指示ができます。
・飼育費用1000万円は、次女のものではなく信託口という預金口座に入り、しっかり管理されます。
・こうやって、愛犬ペロリは信託契約によって守られる存在となります。
(2)信託の良いところ
1) 信託財産は、遺産ではなくなるので、相続人が勝手に遺産分割できない。
2) 愛犬は「信託財産」になり、次女の所有物ではないので、次女が勝手に処分できない。
3) 契約なので、守ることが義務! 監督する立場の人もいる。
4) 不測の事態(事情の変更)が起きたときでも、柔軟に対応可能!
3.まとめ
私達は高齢化が進むことによって、次のような様々な悩みを抱えることになります。
1) 判断能力が低下したときの財産管理
2) 遺言書の作成方法(書き換えリスク)
3) 相続(特に遺留分問題)への対策
このような悩みを解決するため、信頼できる家族(受託者)に自分の財産管理を託すのが、「家族信託」です。家族信託を利用すると、生前の財産管理に加え、死後の相続に関する様々な悩みを解決することができます。