「不動産を持つということ」リスクと事前対策
「相続対策と所得税対策 土地持ち資産家必修の知識」講師:たかやまあゆみ税理士事務所所長 税理士 高山亜由美氏
相続が突然起こってしまい、何をどうしたらいいか分からないという話をよく聞きます。
平成30年5月21日(月)、住宅金融支援機構本店1階すまい・るホールで開催されたセミナーでは、不動産を持つリスクと事前対策をテーマにしました。
第1部では税理士の高山亜由美氏より、「相続対策と所得税対策 土地持ち資産家必修の知識」とのタイトルで、(1)相続対策の基本と失敗例、(2)所得税はなぜ経年とともに増加するのか、(3)固定資産税の払いすぎ、についてお話しいただきました。
ここでは相続対策の中級編として質問の多い、「賃貸経営の法人化」を中心にまとめました。
1.最新の不動所得税はなぜ経年とともに増加するのか?産市場動向
賃貸住宅経営が順調に推移していくと、年とともに支払う所得税は増えていきます。
建物付属設備の減価償却期間の終了、支払利息の減少等により計上できる経費が減ってくるからです。
この場合に重要なことは、所得税だけの対策を考えるのではなく、相続税対策と合わせてトータルで考える視点が重要になります。
この両方を減らすために、利益の出ている賃貸経営事業については「法人化」することを考えた方が良いと思います。
2.法人化の検討
法人化の費用は、登記費用などの直接経費と、個人から法人に資産を移転する際の譲渡所得税などですが、法人化した場合のメリットには次のようなものがあります。
- 「累進課税の緩和」:賃貸経営を個人で行っている場合、所得金額が多くなると所得税・住民税が累進課税のため、どんどん税率が高くなります。賃貸経営の法人を設立すると、法人税課税に変わるので納税額が下がる可能性があります。
- 「所得の分散」:法人では経営者自身への給料が役員報酬として損金算入が認められ、将来の退職金も損金に算入されます。その他、親族へ役員報酬等を支払うことで所得分散が可能となります。
- 「保険料」:個人事業では生命保険料控除の範囲内でしか所得控除が適用されませんが、法人の場合では契約形態によっては支払保険料の全部または一部が損金算入することができます。
- 「繰越控除」:個人事業では損失繰越ができるのは最大3年なのに対して、法人では平成29年4月以降に開始する事業年度に生じるものは10年間も損失を繰り越すことができます。
- 「財産評価額の低減効果」:個人所有財産と法人を介した間接所有財産という性格の違いから、評価額を下げやすく相続対策につながります。
3.法人化した後の事業承継
法人の事業承継という形で相続する場合、死亡後に相続を行うだけでなく生前にも事業承継の対策を取ることが可能になり、引き継ぎ方法の選択の幅が広がると言えます。
生前の事業承継では、「贈与」「譲渡」という形式で引き継ぐことができますが、自社株分散リスク、買取資金の要・不要、遺留分問題、税金問題の全体を考慮して方法を選択します。
死亡後に、慌てて事業承継対策を取る場合には、自社株分散リスクが起きないよう安定経営の確保を考える必要性があります。
第2部では会長の谷崎憲一が講師を務め、その後に個別のご相談を承りました。
勉強熱心な皆様の熱気を感じ、協会としましてもこれからの情報提供に尽力してまいりたいと思いました。