『賃貸管理、家賃滞納督促の手順と解決のポイント』
家賃滞納の督促電話をしてもなかなか連絡が取れない、時間帯を変えて電話をしても出ない、よくあることです。訪問しても不在の場合は催促状を郵送しましょう。1週間経っても連絡が取れない場合は連帯保証人に連絡します。それでも駄目な場合は、配達証明郵便での催促状……、その後のさまざまな手続きの進め方についてご説明します。参考資料として、文末に公的機関の相談窓口の連絡先を掲載しております。
連絡が取れない場合
時間帯を変えて何度か電話をしても出られない、部屋を訪ねてもいつも不在、というように連絡が取れない時は、入居者に「督促状」を郵送します。賃貸住宅が自宅の近くにある場合は、書面をポストに入れた方が早くて良いでしょう。(深夜や早朝の電話、訪問はやめましょう)
以下は「督促状」の文例です
1週間経っても入居者と連絡が取れない場合は、連帯保証人に連絡しましょう。連帯保証人に入居者本人と連絡を取って貰い、いつ支払うか連絡を貰います。連帯保証人とも連絡が取れないという場合は、早めに弁護士や専門家などに相談すると良いです。
滞納から2週間経っても支払確定日が決まらない場合
「必ず○○日に支払います」という支払確定日が決まらない場合は、連絡が取れているとしても督促状を送ります。すでに督促状を送っている場合でも再度送ります。配達証明郵便にするのがよいでしょう。
並行して電話督促、訪問督促をします。時間が経って滞納額が大きくなる前に、こまめに請求することが大事です。
1ヵ月滞納の場合
督促状と一緒に「賃貸借契約解約予告状」を配達証明郵便で送ります。
相当の猶予を与えて期限を定め、「いついつまでに入金がなければ、法律に則って退去をお願いします」と書き添えます。並行して電話督促、訪問督促を続けます。
3ヵ月滞納の場合
「督促及び解約明渡し通知」を配達証明郵便で送ります。
「契約は解除されました……。○○日以内に退去するように……。」などの文言を盛り込みます。のちに明渡し裁判となった場合を意識した内容になります。
滞納が3か月を過ぎた後に……明渡し訴訟
滞納が3か月を過ぎると、明渡し訴訟を起こして判決を貰い、その判決に基づいて明渡しの強制執行の手続きを取る……など、対策を検討する時期となります。
しかし、裁判と強制執行には時間とお金がかかります。いざ裁判となると、判決までに最低でも2か月、強制執行の申立をしてから明渡しまで最低1~2か月。滞納発生から、少なくとも半年以上の時間がかかります。
さらに、弁護士報酬、運搬費、廃棄費で合計100万円前後の費用がかかる場合があります。大家さんにとっては手痛い出費です。
裁判や強制執行は、あくまで最終的な手段と考えて、なるべく早い時期に話し合いで解決するのが最良の手段と言えます。
解約が合意に至った場合は
「賃貸借契約解除及び建物明渡しに関する合意書」を書面にします。但し、きちんと署名押印を貰ったとしても、その通り実行して貰えないこともありますので、まだ安心はできません。
合意書に盛り込むべき内容
a. 解約日の明示。以後、入居者に占有権の無いことの確認
b. 明渡し期限の明示
c. 滞納家賃残高の確認と支払期限の明示
d. 原状回復義務及び敷金精算方法の明示
e. 残置物の所有権放棄及び処分の委任、費用負担等の明示
解決後・・退去、明渡し時の留意点
(1)入居者移転先住所・連絡先の把握
(2)滞納家賃残高の確認と清算方法の確認
(3)毀損箇所の撮影(入居前の写真も撮っておくと比較できてなお良い)
(4)入居者負担分の修繕箇所の確認および費用の見積り
(5)鍵の返却及び交換(即時に行うこと)
(6)電気・ガス・水道など公共料金にかかわる諸手続き
慢性的な遅延者対策
頻繁に入金が遅れるが1か月以上は滞納しない、といったルーズな入居者がいる場合、滞納の慢性化を断ち切らなければなりません。面談、手紙等で、「約定された支払期日を守る」旨を約束して貰い、併せてそのことを誓約する書面に署名を貰ってください。書面には、「これ以上の信頼関係毀損があれば賃貸借契約が継続されない」旨を明記します。なお、「まあ、いいか」という軽い考えのもと、滞納を繰り返す入居者には、携帯電話やスマートフォンのショートメールで事前に「入金日のご案内」を送るのも効果的です。
滞納督促には用心深さが必要
最近は2年、3年という長期の滞納も増えてきました。ご年配の大家さんに多く見られるのが、問題を先延ばしにしてしまうケースです。子供にも言えず、悩み続けている方もいらっしゃるようです。
やっと契約解除、退去となっても、原状回復費用の分担や敷金の返還を巡って再び揉め出す例が多数聞かれます。大家さんに散々苦労をかけていても、権利だけは手放さないということなのでしょうか。すぐに「キレる」入居者も最近は多く、用心しながら交渉しないと逆恨みを買うこともあります。
そのため、上記に紹介したような行動を起こす前には、まず専門家に相談し、事前にアドバイスを受けることをお勧めいたします。相談機関として、ご参考に公的相談窓口をご案内します。
公益社団法人東京共同住宅協会:03-3400-8620
http://www.tojukyo.net/
公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会:03-3510-0088(代)
https://www.chintai.or.jp/
特定非営利活動法人(NPO法人)賃貸経営110番:03-5468-8788
http://www.chintai110.or.jp/
参考:話し合いによって解決するためのADR
ADR (Alternative Dispute Resolution)とは、「裁判外紛争解決制度」と訳され、裁判手続きによらずに紛争を解決する手法を指します。通常、裁判は、当事者間の紛争について裁判所が最終的な判断を示すことによって、その争点に最終的な解決を与えます。
一方、ADRは公正な第三者である調停人を交え、話し合いによって紛争の解決を目指すものです。ADRのメリットは下記の通りです。
・簡易に取り組むことができる
・時間がかからない
・費用が安い
・柔軟性がある
現在は、不動産に関するトラブル解決に特化したADR機関もありますので、相談をされるのも良いでしょう。
一般社団法人日本不動産仲裁機構:03-3524-8013
https://jha-adr.org/
※2018年4月16日執筆:記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。