『老朽アパートのリスクを回避し、優良資産に』

建物が老朽化しクレームと修繕費が増加。大家さん自身も心的負担を感じていた物件を上手に建替えをすることで将来の不安を払拭し資産を守る一手になりました事例をご紹介します。

老朽化はクレームと修繕費の増加の要因に

今回ご紹介するオーナーのKさんは、1976(昭和51)年からアパート経営を始められました。建てた当初は入居状況も良く安定経営をされていました。
所有する物件は木造モルタル2階建てのアパートでしたが、築30年を超えたあたりから傷みが激しく、漏水による壁・床の損傷をはじめ、設備等も随所に不具合が出始め、入居者から頻繁に苦情が寄せられるようになっていたそうです。あちらを直せば、次はこちらと修繕にかかる費用も年々増加傾向にあり、そればかりか、苦情も度重なると気分が滅入ることを感じたそうです。

建て替えのきっかけは大震災

Kさんは、なんとかならないものかと地元の知人に補修の相談に行くことに。当初は、最近のアパート事情を聞いてみるくらいの軽い気持ちだったそうですが、Kさんはわずか2週間後には建て替えという思い切った決断をされています。そのきっかけは、知人から「ある大震災で入居者が老朽化したアパートの倒壊によって死亡し、裁判により1億円以上の損害賠償の支払い命令を受けた」という情報を聞いたことです。
 Kさんは所有するアパートでも最近、老朽化によるモルタルの外壁がはがれ落ちるという出来事があった事を思い出しました。幸いにもけが人は出なかったのですが、もしも入居者や通行人が落ちてきた破片で怪我でもしたら大変な事だと感じたようです。また、Kさんのアパートは1976年の築。宮城県沖地震の後改正された建築基準法での新耐震基準(1981年施行)を満たしていない事も知り、1981年以前の建築物は震度7クラスの大地震での倒壊リスクは95%と聞き、何年も前からくると言われている東海地震など、大地震が発生した場合の大家としての責任の重大さを感じたと言います。Kさんは損害賠償云々よりもむしろ、大家としての責任を全うしなかったばかりに他人様の命を奪うような事があっては申し訳が立たないと感じ、建て替えを決断されたのだそうです。

困難な立ち退き問題、どのようにクリアしたのか

建て替えを決断されたら、次に問題となるのは、入居者の立ち退き問題です。入居者とこじれると、高額な立退料を請求されたり、退去を拒まれたりと、難航する事が多く、建て替えがスムーズに進まない事も知人から聞かされていました。
 そこで、Kさんは建て替えるアパートの建設を請け負ってくれる業者から、「半年の退去期間を設け、退去に掛かる費用をKさんが負担する」という提案を受けてそのようにしてみる事にしたそうです。立ち退きのスタンスは、出て行ってもらうのではなく、住居の移転に協力していただく気持ちがポイントであると教わりました。幸いにも交渉後の半年間に高額な立退料を請求されるなどトラブルが発生する事も無く、全入居者の退去は完了したそうです。
 3月から立ち退き交渉が始まり、9月には全退去が完了。そこから解体して建て替えを開始。依頼した建設会社はハウスメーカーで工期も短く、3月には引き渡しを受け、入居シーズンにも間に合い満室で新スタートを切ることが出来たそうです。

資産を守る土地活用とは

土地などの資産は先代、先々代から引き継ぐ場合が多く、その大切に継承して来た資産を、次世代へ円満に継いで行きたいというのが多くの資産家の心情です。
 その資産が入居者トラブルや老朽問題などを抱える不良資産であれば、将来それを引き継いだ子供たちが苦労する事になります。今回ご紹介した老朽化アパートの事例も、Kさんの代では何とか無事過ごせても、次世代になってから、管理や修繕のクレーム、不良入居者、地震等での被害など、諸々の問題が発生しかねない状況でした。Kさんは、「建て替えすることで、子孫にとって負の遺産ともなりかねない火種を残さずに、将来起こりうるリスクを回避できたと思います。本当に安心できた」と語ります。

 無策のまま老朽化が進めば、家賃下落・空室の拡大・修繕費用の増加など、収益状況はどんどん悪化していきます。放置したことにより、入居者は安いままの家賃に甘えて、次の転居先が見つからないということで、立ち退きがよりいっそう困難となるケースも見受けられます。 建て替え時期のタイミングを判断できたKさんは、「気苦労が無くなったのが一番うれしい。楽になった分、今まで苦労かけた家内と夫婦で旅行にでも出かけたりしたいです」と笑顔で語ってくれました。

東京共同住宅協会では、賃貸経営・相続(事業承継)・建て替え・リフォーム・リノベーションでのお悩みやお困りなどのご相談も承っておりますので、お気軽にご相談ください。