『空室の原因は築年数にあらず⁉お部屋探しの意外な実態』
賃貸住宅経営において、建物の築年数は入居率や家賃を左右する非常に重要なポイントとなります。実際に、築浅の期間は、すぐに空室が埋まるような人気物件であっても、築年数が経ち建物が老朽化するにつれ、入居者の確保が難しくなってしまうケースは数多く見受けられます。しかし、入居者が確保出来なくなってしまう原因は、本当に「築年数」にあるのでしょうか。アンケート結果をもとに解説します。
お部屋探しで最後まで重視したこと、「築年数」は第6位
アットホーム株式会社が一人暮らしをしている、全国の18~29歳の学生・社会人男女を対象に実施した調査「ユーザー動向調査 UNDER30 2021 賃貸編」の中で、「家賃以外で現在の部屋探しの際に、最初から最後まで変わらずに重視したことは何ですか?」という質問を行っています。
それに対して社会人の中で「築年数」を重視したとの回答は、男女とも6番目になっており、「間取り・広さ」「通勤・通学に便利」「設備」を重視している回答が上位に来ています。学生に至っては、「築年数」重視の回答は下位に位置しています。
「建物が古いのだから空室が出るのは仕方ない」と考え、空室対策を怠ってしまうオーナーさんもいらっしゃいますが、実際には、若い世代の多くは築年数について非常に寛容であることがわかります。つまり、老朽化物件であってもオーナーさんの努力次第で入居率を上げることが可能であり、築年数を理由に満室経営を諦める必要は無いということなのです。
なぜ築年数が経つと入居率が下がるのか
「築年数」を妥協する入居者が多いのであれば、築年数は入居率や賃料にあまり影響しないようにも思えます。しかし、実際には築年数の経過とともに入居者の確保は難しくなり、家賃を下げざるを得なくなってしまうケースが数多く見受けられるのは何故でしょうか。その理由としては、「築年数が経った賃貸住宅は入居者ニーズを満たしていないケースが多い」ということが挙げられます。
入居者のニーズは時代によって変わるものであり、過去には主流であった設備や間取りが、現在では不人気設備となってしまうこともあるのです。例えば、過去には広く普及していたバランス釜や3点ユニット、1口ガスコンロなどは現在では不人気設備の代表となっています。また、間取りについても、近年は1部屋あたりの面積は拡大傾向にあり、昔ながらの20平方メートル未満の1Kタイプは現在の入居者ニーズを満たしているとは言えないのです。実際に、同アンケートの「お部屋探しの際に最後まで重視した設備は何ですか」という質問に対し、学生・社会人ともに「独立したバス・トイレ」がトップという結果となっており、時代による入居者ニーズの変化がよく表れています。
築年数が経っても入居者を確保するために
建物の立地条件を変えられないように、築年数についても建て替えをしない限りは変えることは出来ません。しかし、お部屋の設備やセキュリティー、内装・外観などの条件については、人気の設備の導入や外壁塗装によるデザインの変更などのオーナーさんの努力により、入居者ニーズを満たした内容とすることが出来ます。築年数だけを理由に入居者確保を諦める必要はありません。積極的な投資により、「築年数に寛容な入居希望者から選ばれる建物」にする努力が必要なのです。
※2014年8月20日執筆(2022年05月06日加筆):記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。