『土地にはそれぞれ用途があります』
都市計画地域内の土地にはそれぞれ用途地域が設定されていて、建築できる建物に制限があります。どんな制限があるか事前に確認しておきましょう。
土地活用の前に「法令上の制限」を確認
土地活用についていろいろとお考えいただいた結果、あなたの目的(土地活用のビジョン)は決まりましたか?
その目的を達成するために、事前に確認しておくべきことがあります。それは、あなたの所有する土地にどのような大きさ、どのような高さ、どのような用途の建物が建てられるか、ということです。そういったことを考える際に、基本となるのが都市計画法で定めている「用途地域」です。
例えば、あなたの土地活用の目的が、賃貸住宅を建設して最大限の収益を見込みたいということだとしましょう。周辺の建物状況を考えて、仮に40世帯ぐらいが入る中高層マンション(10階建て)をイメージしたとしても、法令上建てられない場合もあります。また、深夜営業店舗や事業用ビル、単身向けのワンルームを希望したとしても、希望通りの建物を建てられないかもしれません。
市街化調整区域といって、診療所や公共施設以外なにも建てられない土地もあります。なぜこういう規制が入るかといえば、良好な国土の開発のために、多くの土地には用途地域が定められているからなのです。今回は、その用途地域について取り上げてみます。
用途地域ってなに?
都市における住居、商業、工業といった土地利用は、似たようなものが集まっていると、それぞれにあった環境が守られ、効率的な活動を行うことができます。しかし、種類の異なる土地利用が混じっていると、互いの生活環境や業務の利便性が悪くなります。そこで、都市計画では都市を住宅地、商業地、工業地などいくつかの種類に区分し、これを「用途地域」として定めているのです。
住居専用地域は、原則として住宅地としての環境を守るための地域となっています。そのため、第1種低層住居専用地域では面積にかかわらず店舗、飲食店は建築できません。その他の住居系地域でも店舗・飲食店建築についての制限があり、第2種低層住居専用地域では2階以下かつ床面積150平米以下、第1種中高層住居専用地域では2階以下かつ500平米以下、第2種中高層住居専用地域では2階以下かつ500平米以下のものしか建築できないようになっています。このように、住居専用地域系でも一定の店舗や飲食店を建築することができるものの、階数や面積の制限があるので、十分な注意が必要です。
別に説明しますが、その敷地にどのような規模のものが建てられるかを規制している「建蔽率」や「容積率」も、この用途地域を元に決められています。
あなたが可能な土地活用は?
ご所有の土地がどの用途地域に属しているか調べる方法としては、市区町村役場(「都市計画課」や「まちづくり課」のような部署)にて都市計画図を閲覧する、もしくは、自治体によってはホームページ上から都市計画図を閲覧できますので、それらを参照してみてください。最近の行政窓口の建築課の方も、昔に比べて大変親切になってきたようですので、ご自身の足で出向いて、ご相談してみることもよろしいかと思います。ちなみに、ある会社のオフィスがある恵比寿は図のような用途地域になっています。
駅周辺や幹線道路沿いは、商業地域や高度な利用ができる用途地域に設定され、商業的(ビジネス的)な利便性が図られています。土地によっては、用途地域がまたがるケースもよくあります。
用途地域と建設に制限ある建物
地の用途地域は分かりましたが、建築基準法別表第二では、用途地域ごとにどういう建物が建てられないか、詳しく用途制限が記載されています。その概要については東京都都市整備局のサイトをご覧ください。
(用途制限 https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kanko/area_ree/youto_seigen.pdf)
用途地域と土地の利用制限についてご理解いただけましたでしょうか。
おそらく多くの方が所有されている土地は、住居系地域や商業系地域だと思います。住居系地域については、その制限が厳しい地域から緩い地域まで8段階あると考えてください。また、商業系地域については建物の建設に関してはもっとも制限の少ない、高度利用が可能な用途となっています。資産価値としても商業系地域は高く見られますので、土地活用という意味では最もお金を生み出すことができる用途地域です。一方、工業系地域については、住宅の建設が制限されます。学校の建設も制限されますから、工業地域としての活用、工場や倉庫・資材置き場などの利用が見込まれます。
ところで、一部の地域では、用途地域が定められていない場所もあります。用途地域が定められていないのは市街化を抑制する意図であり、「市街化調整区域」と「非線引き区域」とがあります。市街化調整区域や非線引き区域内の土地は住宅建設に制限がありますので、注意が必要です。
※2016年11月1日執筆(2022年11月10日加筆):記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。