『ペット共生型賃貸住宅のマーケットが注目される訳』

※2010年9月2日執筆(2022年4月7日加筆):記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

犬の飼育頭数は減少傾向となっていますが、猫の飼育頭数は緩やかに増加しており、日本で飼われているペット数は15歳未満のこどもを上回り、まだまだ根強いペットブームは続いています。それにも拘わらず、賃貸住宅では「ペット可」の物件は10%程度しかなく、しかも消極的な対応が中心です。これからは、積極的にペットと共生してゆく賃貸住宅が求められてきます。「ペット共生型賃貸住宅」のハード面・ソフト面での内容、賃貸住宅経営上の有利な点などについてご説明します。

マーケットの大きな声。応えきれていない賃貸住宅

日本で飼われているペットの数が、どのくらいかご存知でしょうか。
2021(令和3)年の時点で1605万2000頭、同年の15歳未満のこども人口1495万人と比較すると、日本には「ペット」の方が「こども」よりも多いことになります。

※一般社団法人ペットフード協会「2021年(令和3年)全国犬猫飼育実態調査」。総務省統計局「人口推計-2021年(令和3年3月報)-」。

さらには、「いまペットを飼っている=現在飼育率」と比べ、「将来ペットを飼いたい=飼育意向率」が、倍近い高い数値を示しています。つまりペット市場には、まだまだ大きな潜在マーケットがあるのです。こんなに底堅い市場があるにもかかわらず、賃貸住宅では、いまも「ペット不可」物件の方が圧倒的に多く、「ペット可」は全体の10%程度。それもその「ペット可」は、消極的で「ペット相談」という、本当は嫌だが、仕方なく飼ってもよいよという物件ばかりで、ペット歓迎という物件は、数パーセントもないのが現状です。

歓迎されない理由は、ペットを賃貸住宅内で飼われてしまうと「部屋を汚されるのではないか」、「匂いがつくのではないか」、「鳴き声などで近隣トラブルが起こるのではないか」、「毛玉が水道管を詰まらせると聞く……。」という不安が賃貸経営者様にあるからです。

さて反対に、ペットと一緒に暮らしたいという入居者が、一番求めていることは、気兼ねなく、堂々とペットと楽しく暮らせる環境を手に入れることなのです。それを実現する「ペット共生型賃貸住宅」は、入居者のニーズに比べてまだまだ供給が少ないです。

ただの「ペット可」とは、違います!

「ペット共生型賃貸住宅」とは、どんな住宅のことをいうのでしょうか?賃貸借契約の条件として、ただ単純に「ペット可」としているだけのアパート・マンションとは、まったくの別ものだと考えてください。ペット共生型賃貸住宅とは、ペットを飼う入居者をお客様として歓迎し、そのために、ハード面、ソフト面での付加価値を充実させている賃貸住宅のことです。

たとえばハード面では……

・足洗い場……物件のエントランスなどに設置、散歩から帰ってきたペットの足などを洗うことができる。

・ペット用スペース……居室内に設けられるペットの休息のためのちょっとした専用スペース。あるいはペット用のトイレを置くスペース。

・飛び出し防止柵……ペットが外に飛び出すのを防止するため、玄関に設置。

・リードフック……各住戸の玄関やエントランスなどに、リード(犬の散歩につかう綱)を繋げられるフックが付いている。

・ペット向けの床材……ペットが怪我をしないよう滑りづらく、傷が付きにくい耐久性の高い、かつ匂いや汚れも残りにくい素材のもの。

・ペット向けの壁クロス……傷や汚れがつきにくく、汚れても拭き取りやすい素材。クロスを壁の上下で分けて、退去時の張り替えが低コストで済むような工夫もされていることが多い。

・空気清浄機……匂いの付着や拡散を防止するために設置。

ペットが快適に暮らせるハードも充実

など、ペット共生型賃貸住宅では、こうした設備を充実させているところが多いようです。

また、ソフト面では……

・住戸別にペットの頭数、種類、大きさ、年令、予防接種が済んでいるかなどを確認し記録に残す。

・しっかりとした入居審査……ペットがきちんとしつけられているか、ペット飼育規定を守っていけるか、ペットよりも飼い主の飼育姿勢を厳しく面接審査。

・徹底したガイダンス……共同住宅でペットを飼育するにあたっての注意点を入居者に勉強してもらう。

これらソフト面については、大家さん個人や管理会社だけの努力では実現が難しいことが多いため、一般に「ペットクラブ」と呼ばれる、ペット飼育者をサポートする組織が、管理会社と提携して支援を請け負うことが多いようです。ペットクラブには、民間企業が運営するものや、任意団体によるものがあります。彼らはペット飼育の専門家です。
上記のようなサービスのほか、

・ペットの健康相談、医師の紹介

・ペット用健康保険の販売

・ペットホテルやトリマーの紹介

・ドッグラン(犬の運動場)やペットカフェなどの紹介

・ペット関連イベントへの案内

といったサービスメニューを用意して、ペット共生型賃貸住宅の入居者をサポートしてくれます。
つまり、ペット共生型賃貸住宅とは、ペットと暮らすためのハード、ソフト、両方の付加価値を充実させて、ペットを飼っている入居者やこれから飼いたい入居者を歓迎する共同住宅のことをいいます。また、ペットを飼っている方と飼っていない方が共に暮らせる住宅のことを、ペット共生住宅ということもあります。入居者にとっては、賃貸でありながら周囲に遠慮することなく快適にペットと暮らすことができる安心感が、付加価値として何よりも大きいのです。

小さな投資でも「ペット共生」は実現可能

ペット共生型賃貸住宅と聞くと、物件に特別な設備や 仕様が求められるイメージが強いかもしれません。しかし、ペット用くぐり戸(人が使うドアに追加して設置するペット用の小さなドア)や、ペット用糞尿処理設備(「うんちダスト」などとも呼ばれます)など、よく知られている設備ではありますが、せっかく設置しても、「実際にはあまり利用されていない」という設備が実は少なくありません。物件によっては、リードフック、室内ペットスペース、そして「ペットクラブ」への入会特典だけであっても、十分にペット共生型として、入居者に喜ばれているものもあります。

不利な立地条件、ペット共生型ならば”有利”な場合も

良く知るペット共生型のアパートは、上記の付加価値に加えて、1階の各住戸に小さな専用庭が付いていてミニドッグランとして使えたため、1階住戸がとても高い人気を集めていました。この物件には、もうひとつ、人気の秘密がありました。緑が広がる大きな河川敷まで徒歩1分。愛犬の散歩コースとして最高の場所がすぐそばにあるのです。
このように周囲に、

・犬の散歩ができる大きな公園

・同じく緑地

・ドッグラン

など、ペットが喜ぶ環境や施設がある場合、ペット共生型賃貸住宅は、「駅から遠い」などの普通の賃貸住宅であれば不利な立地をくつがえす、いや反対にプラス要因になります。但し、同じ好環境をねらった類似する物件との競争が熾烈になりすぎないか、計画の段階でよく調査することも忘れてはいけません。

そのほかにも”ペット共生型”には利点が色々

ほかにも、ペット共生型賃貸住宅の経営には、こんな利点があります。

・入居者に恵まれやすい……きまりごとに厳しいペット共生型賃貸住宅を選ぶ入居者ゆえに、真面目なアッパーミドルなどマナーの良い人が多い。

・良い条件でのサブリース……ペット共生型賃貸住宅の高い付加価値を知っている管理会社ならば、その分賃料を高めに設定するか、逆に相場並みに据え置いて満室経営を狙う。どちらにしても大家さんにとっては、良い条件でのサブリースを交渉できる。

・敷金の確保……ペットが部屋を汚すという前提を入居者は知っているため、通常より多い額の敷金を確保しやすい。

・稼働率のアップ……物件が少ないため、お友達が出来てしまうと、あまり転居をしない傾向にあります。よって回転率が低く、空いたとしてもすぐに次の入居者が決まりやすいのです。

なお、ペット共生型賃貸住宅の経営にあたって、先ほど触れたペットクラブとの提携または、ペットに対して積極的に管理できる不動産会社を選ばれることをおすすめします。なぜなら、「ペットを飼う人がたくさん集まるアパート・マンションが近所に出来るらしい。鳴き声など大丈夫だろうか」、「私はペットが苦手なので…」、あなたの計画がご近所に知れると、こんな不安の声が寄せられることがあるのです。そのとき、優良なパートナー提携があるとしっかりとした運営計画を示すことができますし、その後も安心して賃貸経営を営むことができます。