ご相談内容
私の50坪の店舗を10年間、家賃100万円で借りてくれていた友人がコロナ禍の影響もあり退去することになりました。その友人とは20年来の付き合いだったので、そのレストランには家族全員で食事に行ったり、何人もの友達を連れて行ったりしましたし、彼も私達には特別にサービスをしてくれ、とても良い関係が続いていました。
ところが、退去にあたりリフォーム会社に原状回復工事の見積りを依頼して、600万円の見積書を届けたところ、その知人は次のように言うのです。「原状回復費用は150万円位と想定していたので、その数倍の請求にびっくりしました。とても支払えません」。詳しく聞いてみると、友人が行った外側のエントランス改造とか、少し古びていたエントランス壁面への全面塗装、床材を変えたりなどの工事は、家主である私にもメリットがあったはずなので、原状回復工事の対象にならないと言うのです。そのことは、家主である私の了解も得ていると言うのです。
契約書を読み直してみると、原状回復の範囲が契約書に明記されていなかったことに大きな原因はありますが、もう一方では、原状回復については家主指定の業者で施工しなければならないと明記しています。コロナ禍での退去および原状回復工事なので、私にも厳しい状況があります。20年来の付き合いを考えると、頭の痛い問題を抱えてしまいました。
回答
店舗・事務所等の退去で、原状回復トラブル相談が増えています。契約期間中であるけれども将来的な見込みが立たないとか、大幅な売上減少などで泣く泣く退去するテナントさんは、預け入れた保証金の返還を藁にもすがる思いで待ち望んでいます。期待している保証金返還が原状回復工事と相殺されて、返還が望めないとなると、当然、テナントさんの反発は大きくなるでしょう。
不十分な原状回復工事をされると困るので、一般的な契約書では施工会社は家主さん指定となっています。施工会社にしてみると、工事費用は家主さんに負担を掛けるわけではないので、割高な見積書を提出する傾向がないとは言えません。併せて、最近では、予めテナントさんが知り合いの業者に下見積りをとるケースもあります。そういった場合、下見積金額と家主さん指定会社との見積金額との乖離が、5割増し、倍増、今回のように3~4倍というケースもままあり得ますので、大きなトラブルに発展することにも気を付けなければなりません。
いくら知人であっても、知人であればなおさら、原状回復工事の範囲、取り決めルールを契約時に明確にしておくことが重要になります。親しければ親しいほど、逆に厳しい内容を突き付けなければならないのが不動産の世界です。不動産賃貸に限らず、友人・知人に工事・設計・リフォームなどを頼む場合、トラブルが多い業界なので、しがらみのないところで契約を行うことが基本になりますのでご注意ください。