『賃貸住宅経営成功の鍵は、世の中の動向を掴むこと』

満室経営を実現させる為には、世の中の動向を掴み、市場を読んだ先回りの経営をする必要があります。グローバル化が進む日本では、民法改正の流れとなっており、この改正は賃貸住宅経営にも影響を与えます。世の中の流れにアンテナを高く張り、ご自身の賃貸住宅経営に役立てることが大切です。

□世界経済の動きが賃貸住宅経営に影響を与える

賢い賃貸オーナーさんは、世界経済の動きを掴んでいます。一見、賃貸住宅経営とは関係無いようにも見えますが、アメリカや中国、EU、ASEANの動きは、それぞれ密接に日本の政治と経済に絡み合っており、日本の不動産市場にも大きな影響を与えています。例えば、難航した交渉を乗り越えて成立したTPP。米トランプ前大統領はTPPからの永久離脱を指示しましたが、残る11か国の参加で2018(令和元)年12月に発効し、2021(令和3)年に中国も加入を申請しています。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)はアジア太平洋地域の参加国で貿易や投資の障害となる規制をなくし、幅広い分野で新しい共通ルールをつくろうというもので、これにより各国のルールが統一されることになります。これに伴い、日本独自のルールについてはそれに向けて改正する必要があり、様々な民法の改正の動きとなっているのです。民法改正の影響の一つに、賃貸借契約の際に付ける保証人の負う限度額があります。今までの制度では限度額を定めない契約が一般的でした。

しかし、民法改正に伴い、限度額の規定が義務付けられるようになりました。保証人の過剰な負担は世界的な基準にはそぐわないものであることを考えれば、これはTPPの影響を受けた民法の改正と言うことができます。
今から10数年以上前、日本が定期借家契約やバリアフリー等の欧米諸国のグローバルスタンダードを導入し始めた時期があります。今回のTPPは、第二のグローバルスタンダードと言うことができ、世界経済の動向が賃貸住宅経営に影響を与えた事例の一つとなります。

□オーナーさんが警戒すべきは建築費の上昇と空室の増加

わが国は資源が乏しく、建築資材についても輸入に頼る部分が大きいのが現状です。円安の進行は輸入価格の上昇に繋がる為、当然ながらリフォーム費用や建築費にも大きな影響を与えることになります。実際に、表の通りRC集合住宅の建築費指数はこの10年間で24%も上昇しており、賃貸住宅経営を続ける上でも見逃せない問題となっています。

当然、リフォーム単価も上昇しており、クロス代が施工費込みで1平方メートルあたり1,000円で依頼できるような時代は既に終わりを告げています。オーナーさんとしては、建築費だけでなくリフォーム費についても上昇しているという現実を認識しなければなりません。また、空室率についても、日本全体として今後は増々上昇して行くでしょう。現在の日本の空室数は820万戸と言われていますが、少子高齢化の影響により、今から10年後には1,400万戸に跳ね上がるというデータも出ている程です。

但し、これは日本全体を見た時の話であり、首都圏や東京、特に立地条件の良いエリアの物件については、そこまで悲観的になる必要は無いでしょう。現在、立地の良い場所は価格が上昇し、併せて円安による日本の資産価格の割安感もあり、外資系ファンドが多くの有名立地のビル等を買い始めている状況です。今後の見通しは明るいと考えます。需要の高まりにより地価が回復すれば、オーナーさんの資産価値の上昇に繋がります。

□「収益還元法」により、ご自身の不動産の価値を把握する

ご自身の不動産の価値が、一体いくらなのかを把握しておくことが大切になります。
不動産の価格を考える上では、「収益還元法」という、不動産の収益性に着目して、そこから将来得られるべき価値を現在価値に割引して評価する計算方法があります。

例えば、年間で100万円の家賃収入が得られる不動産があったとします。年間で100万円を年利回り10%で還元すると、1,000万円の価値ということになります。この期待利回りは築年数や立地条件によって変動します。

築浅、駅近等の条件の良い物件であれば利回りが低くなり、駅から遠い老朽化物件であれば、利回りが高くなってしまいます。つまり、同じ100万円と言う家賃収入であっても、諸条件が良く5%で還元した場合は2,000万円の価値となり、15%で還元した場合は666万円ということになるのです。

このような方法を用いて、皆様自身が所有されている不動産の価格を把握し、金銭感覚を身に付けて、併せて税務や入居者目線についてもしっかりと学び、賃貸住宅経営に臨んで頂ければと思います。

2022年5月4日執筆:記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。