「土地活用成功のための建物構造の選択方法」

2019(令和元)年11月「あなたに合った土地活用 ゼネコン・ハウスメーカー徹底解明!!」セミナーでは、当協会相談員・黒田真隆が、標記テーマでお話しさせていただきました。
土地を相続された3人のご兄弟が、それぞれ異なる構造で賃貸建物新築を計画された事例について、工事費、工期、耐用年数、修繕費用の比較をしながら、どの構造を選択するかを考えるセミナーでした。

1.はじめに

土地活用の相談をすると、相談相手によって様々な活用方法を提案されることが多いと思います。

・日本の気候風土に合う木造が一番!
・プレハブ化が進んでいる鉄骨造が優れています
・耐震性、耐火性が最も高い鉄筋コンクリートが一番
・スクラップ&ビルドの時代じゃない!リフォームです!

工務店、ハウスメーカー、設計事務所、リフォーム会社など、皆さんご自分が得意とされている商品をお薦めされるのは当然と言えます。

2.相談事例から考える

ある地主さんが亡くなられ、3人のお子様が土地180坪と、それぞれ現金1億円余を相続されました。土地は北側10m道路に面した区画割りしやすい、建蔽率60%・容積率200%で3階建ての好適地です。3人とも、すでにご自宅を所有されていましたが、生まれ育ったなじみ深い土地なので、土地を売却せず60坪ずつに3分割して3階建ての賃貸建物を建てることにしました。
ここで皆さんの嗜好の違いが表れました。それぞれが木造、重量鉄骨造、鉄筋コンクリート造と希望の構造が大きく分かれたのです。計画案が出揃ったところで、ご一緒に相談に来られたのでした。

3.工事費・工期の比較

(1)工事費の比較(3階建て 賃貸住宅)
 Aさんの希望 木造:8,613万円(95.7万円/坪)
 Bさんの希望 重量鉄骨造:9,603万円(106.7万円/坪)
 Cさんの希望 鉄筋コンクリート造:13,455万円(149.5万円/坪)

(2)工期の比較
 木造:300日(本体工事期間180日)
 重量鉄骨造:270日(同150日)
 鉄筋コンクリート造:390日(同220日)

4.耐用年数・修繕費用を比較

(1)耐用年数の比較
 木造:22年(償却率0.046)
 重量鉄骨造:34年(同0.030)
 鉄筋コンクリート造:47年(同0.022) 付帯設備は15年(償却率0.067)

(2)修繕費の比較
主な部位について修繕を行う目安がありますが、部位別の修繕の特徴は次の通りです。

 瓦屋根:木造に多く、鉄骨造、RC造ともにみられる。
 陸屋根:木造では少なく鉄骨造、RC造ともに多くみられる。
 外 壁:構造による仕上げ材の制限はない。
 開口廻り・廊下・階段廻:耐火性能により使用部材に制限、差異がある。
 基 礎:木造では10年ごとに防蟻処理を推奨するケースが多い。
 電気設備・給排水設備・空調設備:構造による利用材料の制限はない。

以上のことから、修繕費の多寡は、建物構造により影響される部分は少ない、と言えます。

5.3人の結論

「木の香りが好き、コストは安い方が良い、マンションに拘らない、早く事業スタートしたい」と考えていたAさんは当初の希望通り、木造を選択。
「構造の拘りなし、コストは安い方が良い、マンションがいい、早く事業スタートしたい」Bさんも予定通り重量鉄骨造。
「コストが相続した現金を上回る、早く事業スタートしたいのに工期が長い」と考えたCさんは、重量鉄骨造に変更。
B、Cさんは同一会社に依頼することになったので、建築費をさらにダウンすることができました。

セミナー、相談会の様子